統計検定2級チートシート
Stage 1 — 第1章 | 統計検定2級チートシート 推定学習時間:60〜80分 | 難易度:★★★☆☆
この章で学ぶこと
このページは、統計検定2級の直前確認に使うチートシートです。 ただし、単に公式を並べるだけではありません。統計検定2級では「どの公式を覚えているか」だけでなく、どの条件で使うか、何と混同しやすいか、問題文のどこを見れば判断できるかが問われます。
この章を終えると、こんなことができるようになります:
- 期待値・分散・分布関数・確率密度関数の基本式を確認できる
- 推定・検定で参照する分布を見分けられる
- 回帰、分散分析、指数、実験計画の頻出公式を直前に確認できる
- 迷ったときに戻るべき攻略ページを判断できる
- 演習や模試で抜け漏れを確認する順番を決められる
関連教材(青の統計学)
1. このチートシートの使い方
試験直前は、細かい証明を追うよりも、次の3点を素早く確認することが大切です。
| 確認すること | 見るべきポイント | 例 |
|---|---|---|
| 対象 | 平均、比率、分散、度数、回帰係数のどれか | 母平均の検定、独立性の検定 |
| 条件 | 母分散既知か、対応ありか、標本サイズは十分か | z検定、t検定、Welch型 |
| 参照分布 | 正規、t、カイ二乗、Fのどれか | 母分散はカイ二乗、分散比はF |
公式を見たら、すぐに「この公式は何のために使うか」を言える状態にしましょう。言えない場合は、対応する攻略ページへ戻るのが効率的です。
2. 公式を見る前に確認する3つの前提
2.1 母集団と標本を区別する
統計的推測では、手元にある標本から母集団の性質を推測します。
無限母集団または復元抽出に近い状況では、標本平均の分散は次の形になります。
有限母集団から非復元抽出する場合は、有限母集団修正を意識します。
母集団分散を分母 $N-1$ で
と定義すると、標本平均の分散は
です。分散の定義によって係数の書き方が変わるため、式だけでなく $S_N^2$ の分母も確認します。
詳しくは「統計的推測の全体像」で扱います。
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2.2 離散型か連続型かを区別する
離散型は「値ごとの確率」を足し、連続型は「密度の面積」を積分します。
| 種類 | 関数 | 確率計算 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 離散型 | 確率質量関数 PMF | 和をとる | ベルヌーイ分布、二項分布、ポアソン分布 |
| 連続型 | 確率密度関数 PDF | 積分する | 一様分布、正規分布、t分布 |
| 共通 | 分布関数 CDF | $P(X\le x)$ | どちらにも使う |
連続型では、密度関数は分布関数を微分したものです。
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2.3 「推定」か「検定」かを区別する
推定は、母数がどのくらいかを求める作業です。検定は、仮説をデータで棄却できるかを判断する作業です。
| 目的 | よく見る語 | 代表的な出力 |
|---|---|---|
| 推定 | 信頼区間、点推定、不偏性 | $\bar{X}\pm$ 誤差幅 |
| 検定 | 帰無仮説、p値、有意水準 | 棄却する / 棄却しない |
3. 記述統計・確率変数の確認表
| 論点 | 公式・定義 | 条件・見方 | 戻るページ |
|---|---|---|---|
| 平均 | $\bar{x}=\frac{1}{n}\sum x_i$ | 外れ値に弱い | 代表値・散布度・標準化 |
| 中央値 | 並べたときの中央 | 外れ値に強い | 代表値・散布度・標準化 |
| データの分散(分母 $n$) | $s^2=\frac{1}{n}\sum(x_i-\bar{x})^2$ | 手元のデータの散らばり | 代表値・散布度・標準化 |
| 標準偏差 | $s=\sqrt{s^2}$ | 元の単位で解釈できる | 代表値・散布度・標準化 |
| 変動係数 | $CV=\frac{s}{\bar{x}}$ | 単位が違うデータの比較 | 代表値・散布度・標準化 |
| 期待値 | $E[X]=\sum_x xp(x)$ または $\int xf(x)dx$ | 確率変数の加重平均 | 確率変数・期待値・分散 |
| 分散 | $Var(X)=E[X^2]-E[X]^2$ | 期待値からの散らばり | 確率変数・期待値・分散 |
| 線形性 | $E(aX+b)=aE(X)+b$ | 期待値は定数項も動く | 確率変数・期待値・分散 |
| 分散のスケーリング | $Var(aX+b)=a^2Var(X)$ | 定数項 $b$ は分散に影響しない | 確率変数・期待値・分散 |
試験では、期待値は線形に動く一方で、分散は係数が2乗になる点がよく狙われます。
データの散らばりを記述する分散と、母分散を推定する不偏分散は分母が異なります。
| 名称 | 定義 | 用途 |
|---|---|---|
| データの分散・標本分散 | $s^2=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}(x_i-\bar{x})^2$ | 手元のデータの散らばりを記述する |
| 不偏分散 | $S^2=\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(X_i-\bar{X})^2$ | 母分散 $\sigma^2$ を不偏推定する |
4. 確率分布の確認表
| 分布 | 何を表すか | 期待値 | 分散 | 試験での見方 |
|---|---|---|---|---|
| ベルヌーイ分布 | 1回の成功/失敗 | $p$ | $p(1-p)$ | 0/1の基本単位 |
| 二項分布 | 独立なベルヌーイ試行の成功回数 | $np$ | $np(1-p)$ | 母比率、成功回数 |
| ポアソン分布 | 一定時間・範囲の発生回数 | $\lambda$ | $\lambda$ | まれな事象、発生回数 |
| 一様分布 | 区間内で一様に起こる値 | $\frac{a+b}{2}$ | $\frac{(b-a)^2}{12}$ | 密度が一定 |
| 正規分布 | 連続量の基本モデル | $\mu$ | $\sigma^2$ | 標準化、近似 |
| t分布 | 母分散未知の平均推定・検定 | 0 | 自由度に依存 | 標本分散を使う |
| カイ二乗分布 | 標準正規の二乗和 | 自由度 | 自由度に依存 | 分散、適合度、独立性 |
| F分布 | 分散比 | 自由度に依存 | 自由度に依存 | 分散比、分散分析 |
分布問題では、「何を数えているか」「連続量か」「分散を扱っているか」を先に判断します。
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5. 推定・検定の確認表
| 対象 | 代表的な統計量 | 参照分布 | 見分ける条件 |
|---|---|---|---|
| 母平均、母分散既知 | $\frac{\bar{X}-\mu}{\sigma/\sqrt{n}}$ | 標準正規分布 | $\sigma$ が既知 |
| 母平均、母分散未知 | $\frac{\bar{X}-\mu}{S/\sqrt{n}}$ | t分布 | $S$ を使う、自由度 $n-1$ |
| 母比率の検定 | $Z=\frac{\hat{p}-p_0}{\sqrt{p_0(1-p_0)/n}}$ | 標準正規分布 | 帰無仮説の比率 $p_0$ を標準誤差に使う |
| 母比率の信頼区間 | $\hat{p}\pm z_{\alpha/2}\sqrt{\frac{\hat{p}(1-\hat{p})}{n}}$ | 標準正規分布近似 | 標本比率 $\hat{p}$ を標準誤差に使う |
| 母分散 | $\frac{(n-1)S^2}{\sigma^2}$ | カイ二乗分布 | 分散そのものを検定・推定 |
| 2母分散比 | $\frac{S_1^2}{S_2^2}$ | F分布 | 2群の分散比較 |
| 適合度検定 | $\sum\frac{(O_i-E_i)^2}{E_i}$ | カイ二乗分布 | 観測度数と期待度数の差 |
| 独立性検定 | $\sum_i\sum_j\frac{(O_{ij}-E_{ij})^2}{E_{ij}}$ | カイ二乗分布 | 分割表 |
不偏分散は、母分散の推定で $n-1$ を使う点が重要です。
第一種の過誤、第二種の過誤、検出力も頻出です。
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6. 2標本検定の確認表
2標本問題は、対応の有無と等分散仮定で分岐します。
| 問題文の特徴 | 見る対象 | 典型的な方法 |
|---|---|---|
| 同じ対象の前後比較 | 差 $D_i$ | 対応ありt検定 |
| 別々の2群、等分散あり | 平均差 | プールした分散を使うt検定 |
| 別々の2群、等分散なし | 平均差 | Welch型のt検定 |
| 2群の比率差 | 比率差 | 正規近似による検定 |
「同じ人の前後」なら対応あり、「A群とB群」なら対応なしです。問題文の設定を先に読むだけで、かなりの取り違えを防げます。
6.1 対応あり:差を1標本として扱う
各ペアの差を $D_i=X_i-Y_i$ と置きます。
典型ミス: 2群を独立標本として扱わない。最初にペアごとの差を作ります。
6.2 対応なし・等分散:プール分散を使う
典型ミス: 等分散を仮定するのに $S_p^2$ を使わない、または等分散を仮定できないのに $S_p^2$ を使う。
6.3 対応なし・等分散を仮定しない:Welch型
典型ミス: Welch型では分散をプールせず、自由度 $\nu$ は近似値を使います。
[図1] 検定選択のフローチャート
7. 回帰・分散分析の確認表
7.1 回帰分析
決定係数は、全変動のうち回帰で説明できる割合です。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| TSS | 全変動 |
| ESS | 回帰変動、説明された変動 |
| RSS | 残差変動、説明できなかった変動 |
記号の注意: 教材によっては ESS を Error Sum of Squares(残差平方和)の意味で使うことがあります。略号だけで判断せず、全変動=回帰変動+残差変動という意味で確認してください。
自由度修正済み決定係数は、説明変数を増やすだけで $R^2$ が上がる問題を補正します。
偏相関係数は、第三の変数の影響を取り除いたうえで2変数の関係を見る指標です。
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7.2 分散分析
分散分析は、3群以上の平均に差があるかを、変動の分解で調べる方法です。
群数を $k$、全標本数を $N$ とすると、ANOVA表は次の対応です。
| 変動要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F比 |
|---|---|---|---|---|
| 群間(要因) | $SSA=\sum_{i=1}^{k}n_i(\bar{X}_i-\bar{X})^2$ | $k-1$ | $MSA=SSA/(k-1)$ | $F=MSA/MSE$ |
| 群内(誤差) | $SSE=\sum_{i=1}^{k}\sum_{j=1}^{n_i}(X_{ij}-\bar{X}_i)^2$ | $N-k$ | $MSE=SSE/(N-k)$ | — |
| 全体 | $SST=\sum_{i=1}^{k}\sum_{j=1}^{n_i}(X_{ij}-\bar{X})^2$ | $N-1$ | — | — |
帰無仮説は「すべての群の母平均が等しい」です。F値が大きいほど、群間差が群内のばらつきに比べて大きいと判断します。
典型ミス: ANOVAで有意でも「どの群が違うか」までは分かりません。必要なら多重比較へ進みます。
7.3 実験計画
フィッシャーの3原則は頻出です。
| 原則 | 意味 | 何を防ぐか |
|---|---|---|
| 反復 | 同じ条件で複数回観測する | 偶然誤差の影響 |
| ランダム化 | 処理を無作為に割り付ける | 系統的な偏り |
| 局所制御 | 条件をそろえる、ブロック化する | 交絡や余計な変動 |
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8. 指数・標本抽出・ベイズの確認表
8.1 指数
| 指数 | 重み | 公式の見方 |
|---|---|---|
| ラスパイレス指数 | 基準時点の数量 | 基準時点の買い物かごで価格変化を見る |
| パーシェ指数 | 比較時点の数量 | 比較時点の買い物かごで価格変化を見る |
基準時点を $0$、比較時点を $1$ とすると、価格指数は次の式です。
ラスパイレスは「基準」、パーシェは「比較」と覚えると、分母・分子の取り違えを減らせます。
典型ミス: ラスパイレスは $q_0$、パーシェは $q_1$ を分子・分母の両方で固定します。
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8.2 標本抽出法
| 方法 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 単純無作為抽出 | 全対象からランダムに選ぶ | 基本形 |
| 層化抽出 | 層に分けて各層から抽出 | 層ごとの代表性を確保 |
| 集落抽出 | 集落を選び、その中を調べる | 調査コストを下げやすい |
| 系統抽出 | 一定間隔で選ぶ | 周期性があると偏る |
8.3 ベイズの定理
検査陽性問題では、分母の $P(B)$ を「陽性になる全確率」として分解するのがポイントです。
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9. 迷ったときのページ逆引き
| 迷い | 戻るページ |
|---|---|
| 母集団、標本、有限母集団修正が曖昧 | 統計的推測の全体像 |
| 平均・中央値・分散・変動係数が曖昧 | 代表値・散布度・標準化 |
| 相関、分割表、オッズ比が曖昧 | 2変量データと質的データ |
| PMF、PDF、CDF、期待値、分散が曖昧 | 確率変数・期待値・分散 |
| 条件付き確率、独立、ベイズが曖昧 | 条件付き確率とベイズの定理 |
| 分布の使い分けが曖昧 | 離散型確率分布、連続型確率分布、標本分布 |
| 信頼区間が曖昧 | 推定と信頼区間 |
| p値、過誤、検出力が曖昧 | 仮説検定の基礎 |
| どの検定を選ぶか迷う | 平均・比率の検定、分散・カイ二乗検定 |
| 回帰、分散分析、指数が曖昧 | 相関と単回帰、重回帰、分散分析、指数と直前確認 |
試験で問われやすいポイント
- 期待値は線形、分散は係数が2乗になる
- 連続型では密度そのものではなく、面積が確率になる
- 母分散未知の母平均ではt分布を使う
- 母分散、適合度、独立性ではカイ二乗分布を使う
- 分散比と分散分析ではF分布を使う
- 対応あり/なし、等分散/非等分散を問題文から先に判断する
- 決定係数が高くても予測精度が高いとは限らない
- ラスパイレスは基準時点、パーシェは比較時点の数量を重みにする
この章のあとに解きたい演習
本文を読んだら、次の問題で「公式を選ぶ」「条件を読む」「計算する」練習に移りましょう。
