分散・カイ二乗検定
Stage 2 — 第12章 | 統計検定2級チートシート 推定学習時間:50〜65分 | 難易度:★★★★☆
この章で学ぶこと
この章では、カイ二乗分布を使う検定をまとめて整理します。統計検定2級では、母分散の検定、適合度検定、独立性検定がよく出題されます。どれもカイ二乗分布を参照しますが、検定したい対象はまったく違います。
- 母分散の検定:ばらつきが基準値と同じかを見る
- 適合度検定:観測度数が理論分布に合っているかを見る
- 独立性検定:2つの質的変数に関連があるかを見る
- 期待度数、観測度数、自由度の数え方を区別する
1. カイ二乗分布を使う場面
カイ二乗分布は、独立な標準正規確率変数の二乗和として現れます。
統計検定2級では、分布の導出よりも「どの検定で何の自由度を使うか」が重要です。
| 検定 | 目的 | 統計量 | 自由度 |
|---|---|---|---|
| 母分散の検定 | 母分散が仮定値か | $\frac{(n-1)S^2}{\sigma_0^2}$ | $n-1$ |
| 適合度検定 | 理論分布に合うか | $\sum \frac{(O_i-E_i)^2}{E_i}$ | カテゴリ数 - 1 - 推定母数数 |
| 独立性検定 | 2変数が独立か | $\sum_i\sum_j \frac{(O_{ij}-E_{ij})^2}{E_{ij}}$ | $(r-1)(c-1)$ |
[図1] カイ二乗分布を使う3つの場面
関連教材(青の統計学)
2. 母分散の検定
正規母集団から標本 $X_1,\ldots,X_n$ を得たとします。母分散が基準値 $\sigma_0^2$ と等しいかを調べるとき、次の統計量を使います。
ここで $S^2$ は不偏分散です。
なぜカイ二乗分布につながるのか
正規母集団からの標本では、標本分散は母分散の周りでランダムにばらつきます。このばらつきを標準化したものが
です。これは、標準正規分布に従う成分の二乗和として表せるため、カイ二乗分布に従います。
直感的には、分散の検定では「平均からどれくらい離れているか」を二乗して合計しているため、二乗和の分布であるカイ二乗分布が出てきます。
仮説の立て方
両側検定なら次のように置きます。
片側検定では「ばらつきが大きくなったか」「小さくなったか」に応じて、$H_1: \sigma^2>\sigma_0^2$ または $H_1: \sigma^2<\sigma_0^2$ とします。
試験での注意点
母分散の検定では、母平均ではなくばらつきそのものを検定しています。平均の検定のように t 分布を使うのではなく、不偏分散をカイ二乗分布に接続します。
関連教材(青の統計学)
3. 適合度検定
適合度検定は、観測されたカテゴリ別度数が、理論上期待される度数と合っているかを調べる検定です。
典型例は「サイコロが公平か」です。6面が公平なら、各面の出る確率は $1/6$ です。実際の観測回数がこの期待から大きくずれていれば、公平とは言いにくくなります。
検定統計量
カテゴリ $i$ の観測度数を $O_i$、期待度数を $E_i$ とすると、
です。
各項は「期待度数からのずれ」を期待度数で割って標準化したものです。観測度数と期待度数が近ければ $\chi^2$ は小さく、ずれが大きいほど $\chi^2$ は大きくなります。
なぜ $E_i$ で割るのか
観測度数と期待度数の差 $O_i-E_i$ だけを見ると、期待度数が大きいカテゴリほど差も大きくなりやすくなります。そこで、期待度数 $E_i$ で割って、相対的なずれとして評価します。
また、差を二乗することで、正のずれと負のずれが打ち消し合わないようにしています。カイ二乗統計量は、カテゴリごとの標準化されたずれの合計です。
手順
- 帰無仮説として理論分布を置く
- 各カテゴリの期待度数を計算する
- $\chi^2$ 統計量を計算する
- 自由度を確認する
- カイ二乗分布表または p 値で判定する
たとえば、サイコロを600回振り、各面の期待度数が100回なら、観測度数との差を使って $\chi^2$ を計算します。
自由度
理論確率が完全に指定されている場合、自由度は基本的に
です。ここで $k$ はカテゴリ数です。
ただし、データから分布の母数を推定してから適合度検定を行う場合は、推定した母数の数だけ自由度を差し引きます。
$m$ は推定した母数の数です。
関連教材(青の統計学)
4. 独立性検定
独立性検定は、2つの質的変数が独立かどうかを調べます。たとえば「性別」と「商品購入の有無」、「学習方法」と「合格/不合格」のような組み合わせです。
期待度数
$r$ 行 $c$ 列の分割表で、行合計を $R_i$、列合計を $C_j$、総数を $N$ とします。独立であれば、セル $(i,j)$ の期待度数は
です。
これは「行に属する割合」と「列に属する割合」を掛け合わせ、全体数に戻していると考えると直感的です。
期待度数の式の意味
独立であれば、「行 $i$ に入ること」と「列 $j$ に入ること」は別々に考えられます。行 $i$ に入る割合は $R_i/N$、列 $j$ に入る割合は $C_j/N$ です。
独立なら同時に起きる割合は積で表せるので、
です。これに総数 $N$ を掛けると、期待度数 $R_iC_j/N$ になります。
検定統計量
自由度は
です。
適合度検定との違い
| 観点 | 適合度検定 | 独立性検定 |
|---|---|---|
| データ | 1つのカテゴリ変数 | 2つのカテゴリ変数 |
| 見たいこと | 理論分布に合うか | 2変数が独立か |
| 期待度数 | 理論確率から計算 | 行合計・列合計から計算 |
| 自由度 | $k-1$ が基本 | $(r-1)(c-1)$ |
5. 頻出のひっかけ
期待度数が小さすぎる場合
カイ二乗検定は近似に基づく検定です。期待度数が小さいセルが多いと、近似が悪くなります。統計検定2級では、期待度数が十分大きいかを確認する問題が出ることがあります。
「独立でない」は因果を意味しない
独立性検定で帰無仮説を棄却できても、それは「2つの変数に統計的な関連がある」ことを示すだけです。一方が他方の原因であるとは限りません。
自由度を取り違えない
- 母分散の検定:$n-1$
- 適合度検定:カテゴリ数から制約数を引く
- 独立性検定:$(r-1)(c-1)$
この3つを混同しないことが重要です。
確認問題
問題1
ある製品の重量は正規分布に従うとする。標本サイズ $n=16$、不偏分散 $S^2=9$ が得られた。母分散が $\sigma_0^2=4$ であるかを検定するときの検定統計量を求めてください。
解答を見る
自由度は $n-1=15$ です。
問題2
2行3列の分割表で独立性検定を行う。自由度を求めてください。
解答を見る
まとめ
| 論点 | 押さえること |
|---|---|
| 母分散の検定 | $\frac{(n-1)S^2}{\sigma_0^2}\sim\chi^2_{n-1}$ |
| 適合度検定 | 観測度数と理論上の期待度数を比べる |
| 独立性検定 | 分割表で2つの質的変数の独立性を見る |
| 期待度数 | 独立性検定では $E_{ij}=R_iC_j/N$ |
| 自由度 | 検定ごとに数え方が違う |
カイ二乗検定は「全部同じ公式」に見えますが、問われている対象を先に見抜けば整理できます。次章では、量的変数どうしの関係を扱う相関と単回帰に進みます。
この章のあとに解きたい演習
本文を読んだら、次の問題で「公式を選ぶ」「条件を読む」「計算する」練習に移りましょう。
